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執筆者の写真就労移行支援ひかり

拒食症・過食症

拒食症・過食症とは

神経性食欲不振症(拒食症)と神経性過食症(過食症)があり、合わせて摂食障害という。

食べることを拒否する拒食症と、大量の食べ物を食べては吐いたり下剤を飲んで排泄したりする過食症は、一見全く別の病気のように思われるが、いずれも「肥満に対する恐怖」や「痩せ願望」など共通する部分があるので、同一線上にあると考えられる。実際に拒食症から過食症へ、あるいは逆の移行はよく見られる現象です。「拒食」や「過食」は表に現れた現象に過ぎず、全く別の現象に見えても、その大本は同じである。

発症の平均年齢は18歳前後の思春期で、圧倒的に若い女性に多く見られる。


 

拒食症

・食べることを拒否し、極端に痩せる

・自分では痩せていると思わず、体重が増えることや食事量を増やすことに強い不安や恐怖を感じる

・病気であることを認めたがらず、治療には無関心か抵抗感を示す


過食症


・ 食欲を抑えきれず、短時間に大量に食べたり、一日中ダラダラと食べ続けたりする

・その後、吐くか下剤を使って、体重が増えるのを防ぐ

・ そんな自分に嫌悪感をもち、抑うつ気分になる


拒食症と過食症を合わせて


「摂食障害」

「食べれば治る」または「食べなければ治る」という病気ではなく、それが出来ないから病気。

摂食障害


摂食障害の各タイプ

痩せたい気持ちの違い


拒食症 (過食症を伴なわない拒食症)

痩せても保守的な外見を崩さず、むしろ自分の痩せた身体を隠すような服装をすることが多い

「痩せて流行りの洋服を着られるようになりたい」という願望よりも「太るのが怖い」という恐怖に支配されている。


過食症

痩せること=美しくなること」であり、「痩せて流行りの服を着られるようになりたい」という願望と直接結びついている。

痩せてキレイになれば自信が持てるようになるのではないかと思っている。

ダイエットに成功して痩せてくると、派手な化粧や服装になったり、自分の痩せた体を誇示するような外見になったりする

 

発症


・拒食症

「実際の生活で、それまで通りのやり方が通用しなくなり、遭難したような気持になっている時」に発症しやすい。そのため、思春期の発症が多い。

自分で努力するタイプ

人に頼ることが苦手で、自己責任で良い結果を出そうとする

拒食症になりやすいタイプ

思春期に入ると「頑張れば報われる」「いい子にしていれば好かれる」というルールが通用しなくなってしまう。

新しいルールが見つかるわけでもなく、自分は人生がコントロールできなくなってしまったと感じる。

その不安を何とかするために頼るのが「拒食」

体重だけはそれまでのルールが適用する。食べなければ体重の数値は下がってくれる。 努力が報われる

実生活が混沌としてしまったときに体重は唯一のよりどころになり、とりあえず安心感と達成感を与えてくれる


・過食症 (過食には2種類ある。)

生命を維持するための過食

「飢えを解消するための過食」は摂食障害特有のものではなく、生物として人間に備わった力

ダイエットをして飢餓状態になると、「死なないように」する力が働き、「とにかく食べなければ」という状態になり、過食が起こる。この力は私たちの命を維持するためには必要なものです。

カロリーの低いものでパンパンになっているのはあくまでも胃です。胃は「これ以上は胃に入らない」という信号だけは出すが、食欲に働きかけるものではありません。脳が「しばらく食べなくてもよい」と認識するためには、きちんとしたカロリーが吸収される必要があります。

この過食は、「過食」の要素とは関係なく、むしろ「拒食」の要素とセットで出てくるものです。そしいてこれは、生物としての人間に備わった生体防御能力なので、治療の必要はなく、「拒食」が改善すれば、その反応として過食も良くなる


治療の対象となる過食

「過食」の要素と関係があり、治療の対象となるもの

「モヤモヤとしたネガティブな気持ちから逃れたい」という動機から行われる過食

自分はストレス発散のために過食していると意識している人もいれば、そこまではっきりした目的意識を持っておらず、「過食によって、とにかく自分を麻痺させる」という感覚の方が近い人もいる。


過食症(摂食障害)になりやすいタイプ

自分を嫌う気持ちを蓄積させた人

対人関係において自己主張することが苦手

(一見はっきりしているように見える人でも、肝心なことは何も言っていないことが多い)

自己主張しないため、他人に振り回されてしまう

人に頼ることが苦手で、自己責任で良い結果を出そうとする


ネガティブな気持ちを「モヤモヤとした」ままで抱えている。

もともと相手に伝えて解決しようと思っていないので、「モヤモヤとした」ものをはっきりさせようとしない。

とにかく過食することでバランスを保とうとする


拒食の苦しさ摂食障害の苦しさ

拒食の苦しさ

・病的な痩せの状

・治すのも怖い、治らないのも怖い

・他人と一緒に食事ができない(だから親しい人を作れない)

・身近な人の食べるものが気になって仕方ない

・痩せすぎていて好きな洋服が着られない

・ 子供が欲しくても妊娠できない

・ 冷えがひどい

・ 体力がない

・ 骨があたって痛いため硬い椅子に座れない


拒食」が治るときの怖さ

精神的に安心してくると、それまでは「拒食」へのしがみつきによってあまり感じることのなかった健康な食欲が再び感じられるようになる。食べたくなり、本人にとってはかなり多い量を食べるようになり、「体重が増えてしまう」という恐怖に直面する

 

過食の苦しさ

・ 過食をコントロールできない自分への強い嫌悪感

・ 嘔吐をする自分への嫌悪感

・ 過食を維持するための経済的な不安

・ ゴミ処理など現実的なわずらわしさや情けなさ

もしも「食べたくて食べている」だけの人だったら、苦しくならない程度に済ませるということもできるかもしれないが、病気であるためにどれほど苦しくてもコントロールできない。


治療

過食症については効果的な治療法が明らかになっている。

対人関係療法

過食症の人の「モヤモヤした」気持ちが、対人関係のテーマであることが多いことから、どんな対人関係パターンが過食のエネルギーを作り出しているのだろうかというところを見ていく治療法

過食という症状には手を付けないので、まずは対人関係に自信がつき、そのあとから過食症状も良くなる、という順番で進みます。

治療終了時点では過食という症状がなくなった人はあまり多くありませんが、そのあとの日常生活の中で、効果が伸びていっています。


認知行動療法

食生活日誌を付けて、食生活や下剤の乱用などを全般に是正し、更に、どのような偏った考え方が過食に繋がっているのかということを見ていく治療法


例えば、「人間は完璧でなければならない」という信念を持っていれば、自分が何かをうまくできなかったときに自分を強く責め、過食へと追い込んでしまう。そのような信念を色々な角度から検討し、より客観的・合理的な見方ができるようになっていくことが治療の目標です。

認知行動療法は効果的な治療法ですが、特に食生活日誌などは、よほど動機付けのある人でないとなかなかうまくいきません。上手くいかない自分を責めてしまい、ますます自分を責めてしまい、ますます過食に向かってしまうことがあるので、向き不向きはかなりはっきりと分かれます。


拒食症

拒食症の治療については、過食症に比べ、研究データが不足しているため、明らかになっていない。

「拒食」は不安の病なので安心できると、治療上に大きな前進をします。過食を伴なわない拒食症の人の中には、安心しただけで治っていく人もいます

過食を伴なう人の場合は、「過食」の要素もあるので、ただ安心するだけではなかなか治りません。過食症と同様に、対人関係治療法や認知行動療法の要素を活用していく必要があります。

現時点での拒食症の治療としては、安心という要素をベースにしながら、対人関係療法や認知行動療法の役立つ要素を取り入れるのが最も良いと考えられています。「体重を増やさないと〇〇になるぞ」というような脅し治療は逆効果になる。


参考資料:高木洲一郎・浜中禎子『最新版 拒食症・過食症の治し方がわかる本』

切池信夫『拒食症と過食症の治し方』

水島広子『「拒食症」「過食症」の正しい治し方と知識』

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