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  • 執筆者の写真就労移行支援ひかり

最近よくニュースで見る、福祉業界の虐待ついて

1. 虐待とは

虐待の具体的な内容は様々で、肉体的暴力をふるう、言葉による暴力をふるう(暴言・侮辱など)、いやがらせをする、無視をする、等の行為を繰り返し行うことをいいます。

児童虐待や性的虐待など、虐待はその対象も行為主も様々です。例えば家庭では、夫が妻を虐待する、父親が子を虐待する、妻が夫を虐待する、母親が子を虐待する、夫婦で子を虐待する、成人している子が高齢者となった親を虐待する、などということが起きています。職場では、雇用主(経営者)が従業員を、また先輩格の従業員が後輩格の従業員を虐待することがあります


2. 福祉での虐待

本来ならば弱者を守り、生活面や学習面・健康などを援助する立場にある福祉の現場で虐待が起こる事があります。虐待を発見、目撃した場合の通報が義務化された事が一因と考えられますが、福祉の現場での虐待件数は残念ながら増加しているのが現状です。

行為者は、虐待しているという自覚がある場合もありますが、自覚が無いことも多いです。例えば、虐待を行っている職員には自覚が無いことも多く、勝手に、「躾(しつけ)をしている」「指導の一環」と思っていること(勘違いしていること)もしばしばです。

虐待児童虐待・高齢者虐待・障害者虐待など、福祉の現場で起こりえる虐待は様々な種類・パターンがありますが、今回は自分自身に最も関係がある「福祉の現場における障害者虐待」について、レポートを作成しています。


3. 障害者虐待の定義と種類

「障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律」では、障害者虐待の定義を以下のように規定しています。


養護者による虐待

「養護者」とは、障害者を現に養護する人であって、障害者福祉施設従事者等及び使用者以外の人をいいます。

具体的には、身辺の世話や身体介助、金銭の管理などを行っている障害者の家族、親族、同居人等が該当し、同居していなくても、現に身辺の世話をしている親族・知人などが養護者に該当する場合があります。


障害者福祉施設従事者等による虐待

「障害者福祉施設従事者等」とは、「障害者福祉施設」又は「障害福祉サービス事業等」(障害福祉サービス事業や一般相談支援事業・特定相談支援事業、移動支援事業、地域活動支援センターを経営する事業、福祉ホームを経営する事業など)に係る業務に従事する人をいいます。


使用者による虐待

「使用者」とは、障害者を雇用する事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について事業主のために行為をする人をいいます。

この場合の事業主には、派遣労働者による役務の提供を受ける事業主など、政令で定める事業主は含まれますが、国及び地方公共団体は含まれていません。



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4. 障害者虐待の種類

「障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律」では、障害者虐待の種類を以下のように規定しています。


身体的虐待

暴力や体罰によって体に傷やあざ、痛みを与える行為。身体を縛りつけたり、過剰な投薬によって身体の動きを制御する行為。

【具体的な例】

平手打ちする・殴る・蹴る・壁に叩きつける・つねる・無理やり食べ物や飲み物を口に入れる・火傷・打撲させる・身体拘束(柱や椅子やベッドに縛りつける・医療的必要性に基づかない投薬によって動きを制御する・ミトンやつなぎ服を着せる・部屋に閉じ込める、施設側の都合で睡眠薬を服用させる等)


性的虐待

性的な行為やその強要(表面上は同意しているように見えても、本心からの同意か見極める必要がある。)

【具体的な例】

性交・性器への接触・性的行為を強要する・裸にする・キスする・本人の前で猥褻な言葉を発する、又は会話する・猥褻な映像を見せる・更衣やトイレ等の場面をのぞいたり映像や画像を撮影する。


心理的虐待

脅し、侮辱等の言葉や態度、無視、嫌がらせ等によって精神的に苦痛を与えること。

【具体的な例】

「バカ」「アホ」等 障害者を侮辱する言葉を浴びせる・怒鳴る・ののしる・悪口を言う・仲間に入れない・子供扱いする・人格を貶めるような扱いをする・話しかけているのに意図的に無視する。


放棄・放置(ネグレクト)

食事や排泄、入浴、洗濯等身辺の世話や介助をしない、必要な福祉サービスや医療や教育を受けさせない等によって障害者の生活環境や身体・精神的状態を悪化、又は不当に保持しないこと。

【具体的な例】

食事や水分を十分に与えない・食事の著しい偏りによって栄養状態が悪化している・あまり入浴させない・汚れた服を着させ続ける・排泄の介助をしない・髪や爪が伸び放題・室内の掃除をしない・ごみを放置したままにしてある等劣悪な住環境の中で生活させる・病気やけがをしても受診させない・学校にいかせない・必要な福祉サービスを受けさせない・制限する・同居人による身体的虐待や性的虐待、心理的虐待を放置する。


経済的虐待

本人の同意なしに(あるいは騙す等して)財産や年金、賃金を使ったり勝手に運用し、本人が希望する金銭の使用を理由なく制限すること。

【具体的な例】

年金や賃金を渡さない。本人の同意なしに財産や預貯金を処分、運用する・日常生活に必要な金銭を渡さない(使わせない)・本人の同意なしに年金等を管理して渡さない。


5. 福祉の現場で虐待が発生しやすい背景

・虐待が発生しやすい大きな要因として、施設や環境の閉鎖性があります。

① 施設内における様々な活動・行為が、利用者と職員だけで進められることが多く、外部の人の目が届かないことになります。

② 安心・安全な生活、就労、学習の場として外部から守られていますが、逆に外部の人の目が届かないことになります。

③ 職員の中には、自ら虐待行為を行わないが、虐待行為を助長する役割を担う者がいます。また、見て見ぬふりをして口を閉ざして傍観者となる者もいます。

*このように、閉鎖性については、外部の人の目が届かない「建物の壁」と職員が外部に対して事実を告げることがない「人の壁」とがあります。

・利用者が虐待を受けやすくなる条件のキーワード

① 障害者の多くは「虚弱」である場合が多く、力の強い職員からの暴力や暴言に抗し難いことです。

② 「コミュニケーションに支障」があり、互いに上手く伝えられなかったり誤解を生じたりすることが原因となる場合がありあす。(重症病棟等では、虐待を受けても、訴えられない人が多い事も特徴と言えます。

*虐待行為を行う者は、自己中心的な視点からしかものを見たり考えたりできず、利用者の立場に立てないことにより利用者に対する言動に手加減がない状態になります。


6. 具体的な虐待発生の構図

(1) 組織としての側面から

① 施設風土として「差別 ・思い込み ・勉強不足」等があると、利用者を「負」の側面からのみ捉えるようになり、問題意識が低下 ・欠如し、自分の都合や利益を優先し、短絡 ・安易な発想をするようになります。

② 規制の強い組織では、職員間の関係は弱肉強食的なものになります。そのような組織では、利用者を介護や世話をされる「弱者」として、自分より下位に位置付けやすくなります。

③ 役割の固定化や職員同士の情緒的つながりが強いと、「責任の転嫁」「仲間だから意見はしにくい」というように、無責任で良心のない組織になる恐れがあります。

(2) 人間関係の側面から

① 利用者と職員の間に介護する側とされる側という関係が存在すると、支援をする上でのストレスの高まりは、職員の自己防衛を刺激して、ストレスの原因となる利用者への攻撃的な言動を誘発しやすくなります。

② 「世話してあげる感」の強い職員と要求期待が多い・強い利用者との間にも問題が発生しやすくなります。両者の力に差があると、強者は攻撃・放任・排除の言動を取り、弱者は逃避的になったりします。

実際には、明確に虐待と判断できる事例はそれほど多くはなく、むしろ、不適切なケアと虐待との判断が難しい、いわゆるグレーゾーンにある言動が多いです。そして、不適切なケアが蔓延する兆候は、施設内事故の原因究明に消極的な施設の特徴と一致しています。つまり、事故を「利用者の心身機能の衰えが原因でやむを得ない」「職員個人の不注意にとどめる」「原因不明として取り扱う」等の特徴のある施設では不適切なケアや虐待も発生しやすいため、振り返りや対応等について施設全体で取り組む必要があります。


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