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パーソナリティ障害

偏った考え方や行動パターンがあるために、周囲の人たちと良好な人間関係をつくれず、社会生活や職業生活において支障をきたす障害

自分の性格に偏りがあるとは思っていないので、「障害」という意識は持ちにくく、本人にも周囲にも気付かれにくく、同時に周囲の人にも気づかれにくい。


パーソナリティ障害全般の共通の特徴

① 認知、感情、対人関係、衝動性などにおいて、著しい偏りのパターンがみられること

② 偏りのパターンは、青年期成人期早期10代後半から20代前半まで)に始まり、それから長年続いていること

③ 偏りのパターンがあることにより、社会生活や仕事の場面で支障が生じていること

・③の社会生活に支障をきたすという要素は、パーソナリティ障害を決定づけるものとなる。


以前は「人格障害」と呼ばれていた


「Personality」は日本語で「人格」と直訳されるが、英語の「Personality」と日本語の「人格」とでは言葉の持つニュアンスが少し異なる。本来、Personality」は(他人から見て取れる)性格や性質、人柄といった意味だが、日本語の「人格」には、人としての道徳観や倫理観、良心の有無を含んだ意味合いが込められている。

そのため、「人格障害」と聞くと、道徳観や倫理観に大きな問題がある人、犯罪を起こしやすい危険な人物といった誤解すら招きかねない。そうした極端な否定的なイメージを回避するために、現在、日本語では「パーソナリティ障害」と呼ぶようになった。


原因

パーソナリティ障害を発症する原因は1つではない。本人が生まれ持っている気質、育てられた環境、親や周囲の接し方、時代特有の価値観や考え方など、様々な要素が関連している。また、これらの要因は、あらゆるパーソナリティ障害の発症に関与しているものの、パーソナリティ障害の種類によって、強く関与する要因には違いがみられる。


生まれ持った気質

人は誰でも生まれながらにして固有の気質を持ち合わせている。個人のパーソナリティが形成されるまでには、発達していく中での親子関係などの影響を受けるが、基盤となるオリジナルな気質は生まれつきのものだといえる。こうした生まれつきの気質は、その人のパーソナリティのベースとなるものであり、その偏りがパーソナリティ障害の基盤となっている場合がある


育てられ方の影響

自我が芽生える幼少期に、親(養育者)にどのように育てられたかということは、パーソナリティの形成に大きな影響を及ぼす。親から十分な愛情を注がれたか、親子の関係がスムーズに築けたか、虐待やネグレスト(育児放棄)を受けなかったかということが重要。子供のころに親との愛情関係がしっかり築かれていない、あるいは主体性を形成し損なった場合、パーソナリティは不安定になりやすく、大人になってからも、些細なことで不安になったり傷つきやすくなったりする。


・遺伝子の関与

パーソナリティ障害の関連遺伝子がいくつかあり、それを受け継ぐと、パーソナリティ障害を発症しやすくなる。ただし、親がパーソナリティ障害の場合、子どもも必ずパーソナリティ障害になる、というほどの強い因果関係はない。


人間関係や生活環境

幼い時の生活環境や人間関係もパーソナリティ障害の発症と関連がある場合が少なくない。たとえば、学校や職場における人間関係につまずきが生じている、仕事で自分の能力が十分発揮できない、といった状況にたびに大きなストレスを抱えると、脳内の神経伝達物質のバランスが崩れ、パーソナリティ障害を発症しやすくなる。





DSMのパーソナリティ障害

DSM-Ⅳ-TRでは、パーソナリティ障害は10種類のタイプに分類され、それぞれの特徴や傾向に基づき、3つのグループに分けられている。


A群 奇妙で風変わりな考え方や行動を特徴とする

妄想性パーソナリティ障害

スキゾイド・パーソナリティ障害

スキゾタイパル・パーソナリティ障害


B群 感情的かつ衝撃的で周囲を巻き込みやすい


反社会性パーソナリティ障害

境界性パーソナリティ障害

演技性パーソナリティ障害

自己愛性パーソナリティ障害


C群   不安や恐怖心が強く内向的

回避性パーソナリティ障害

依存性パーソナリティ障害

強迫性パーソナリティ障害


①未熟性格型

発症は生まれつきの性格よりも、発達過程の環境によるところが大きく、人格が未熟な状態である。


境界性パーソナリティ障害

感情や対人関係において不安定である。依存する相手を常に求め、その対象に見捨てられたと感じると、自傷行為や過食、浪費などの衝動行動に走りやすい

【接し方のポイント】

患者さんのペースに巻き込まれないようにする

・過度に同調したり、逆に強く非難したりせず、一歩引いた位置で冷静に構え、振り回されないようにする。

ペースに巻き込まれ、意図に乗せられてしまうと、同じ手を使うように

・人に対する理想化やこき下ろしが激しくても、避難しない

暴力行為だけを取り上げて責める態度をとるのではなく、本人の葛藤を理解して「あなたのことを心配している」という態度を見せることが大切。

衝動的な行動をとっても動揺を見せない


密着しすぎない人間関係でいる

距離を置くためのコツ

・ 頼まれることを何でも引き受けない

・直接関りを持たない問題には立ち入らないよう


あえて「逃げ道」を用意する


アルバイトを頑張って続けようか、辛いので辞めようかと悩んでいるとき、

「がんばれ」と言われるとアルバイトを続けた方がいいと思っているのは周りの意見で、自分の本心は辞めたいのだと思い込んでしまう。「辞めてもいい」と言われると、「続けたい」という気持ちも自分のものだと理解できるようになる。


自己愛性パーソナリティ障害

自己の誇大感、他者の評価に対する過敏さ、他者に対する共感性のなさを特徴とする。他者の評価や無関心に対して、激しい怒りや抑うつを示すこともある

【接し方のポイント】

否定しない

上手くできた点は褒めたり評価してあげたりするが、悪いところやうまくできなかった点はきちんと指摘する。


指摘の仕方に注意が必要

×「ダメだね」「しっかりしろ」というような人格を否定するような言い方は避け、

「こういうところを変えてみるともっと良くなる」

「こんなふうにしてみたらどうかな」提案するような口調で言う


②話をじっくり聞き、共感してあげる

見当違いの提案や身勝手な意見であっても、話を途中で遮るのではなく、最後まで耳を傾ける姿勢が大切

一定の距離を保つ

過度に親しげにしたり、逆に突き放したりせず、一定の距離を保つ


回避性パーソナリティ障害

親密な対人関係を望みながら、他者の批判や拒絶を恐れるあまり、社会参加が困難になりやすい。対人緊張症、不登校、引きこもりなども重なる

【接し方のポイント】

否定的なことを言わない

否定的な自己イメージを持った人に更に否定的な言葉を掛ければ本人はますます自信を無くしてしまう

失敗したときなどに「やっぱり無理だったね」というようなあらかじめ出来ないことを予測していたかのような言葉は言わないようにする

小さなことでも褒める

細やかなことでもうまくいったことを褒める。

「よく頑張ったね」「逃げずにチャレンジできたね」というように、意欲や姿勢などを褒める

共感・支持する

感じたことや、こうしたいと思っていることを口にしたときは、受動的な態度で聞くようにする。

強制しない

自分でこうしたいと思う気持ち、これをやってみたいという意欲を尊重する。

「こうしたほうがいい」と誘導したり「これくらいできないでどうする?」と追いつめたりしないようにする。

背を押してあげる

思い切ってチャレンジしようと思っても、なかなか決心がつかないことがあるので、無理強いはしてはいけないが、そっと背を押してあげることも大切。

その時は突き放すのではなく、結果がたとえ裏目に出ても大丈夫というメッセージを伝えておく。

話をじっくり聞き、共感してあげる

見当違いの提案や身勝手な意見であっても、話を途中で遮るのではなく、最後まで耳を傾ける姿勢が大切

一定の距離を保つ

過度に親しげにしたり、逆に突き放したりせず、一定の距離を保つ


反社会性パーソナリティ障害

反社会的な行為(犯罪や詐欺など)をとりながら、罪悪感や良心の呵責を覚えず、不正直で冷淡である。アルコール依存・薬物依存を合併しやすい

【接し方のポイント】

信頼や愛情を寄せ続ける

人や社会から裏切られることに敏感なため、信頼関係が途切れたと感じたときには強い失望感や怒りを感じやすい。


②病前性格型

障害の頻度がより重く、他の精神疾患(統合失調症や双極性障害)に移行しやすい。発症は生まれつきの性格によるところが大きい


スキゾイド・パーソナリティ障害

孤独を好み、他人への関心が薄い。感情表出が乏しく、冷淡な印象を与えやすい。手先が器用で、芸術的な表現力に秀でる面もある

【接し方のポイント】

生来の気質を尊重する

スキソイドの人に無理をして社交的に振舞おうとしたり、興味のない事柄に関わろうとさせたりすると、激しい怒りを誘発することがある。この場合の怒りは、相手に対する憎しみの表現ではなく、人格が危険状況に陥った兆候なので、周囲の人間は、本人が人付き合いは苦手で好んでいないということを知っておくことが重要。

独自世界に踏み込みすぎない

スキソイドは内面に豊かな精神世界を持っている。周囲の人はあまり口を挟んだり、踏み込みすぎないように配慮する。

ほどほどの距離感を保つ

素っ気ない対応だったとしても、周りの人は、拒否感や嫌悪感を持たないように気を付ける。

本人を責めたり、怒りをぶつけたり、無視したりといった態度を取ると、不安を生じさせることになる。


スキゾタイパル・パーソナリティ障害

非社交的で、奇妙な考えや異常な身体感覚、関係妄想などを覚えやすく、常識から逸脱した言動をとることがある。統合失調症と症状が似ている

【接し方のポイント】

信念や考え方を否定しない

独自の精神世界を否定したり、批判したりされると、「自分の考えを否定する人は信用できない」と思い、奇妙な考えや妄想がエスカレートしてしまう。

精神世界に踏み込みすぎない

「他人に自分の精神世界に侵入されたくない、荒らされたくない」という警戒心を持っていることがある。周囲の人があまり接近してくると、自分の世界を侵されてしまうのではないかという恐怖を感じ、過敏に反応してしまう。

無理をさせない

対人関係を築くことが苦手なので、本人の自発的な欲求がない限り、他人と親密に関わろうとすることは精神的な負担となる。


妄想性パーソナリティ障害


他人に対する不信感・猜疑心が強く、自らの正当性を主張するために、攻撃的になったり好訴的になったりする。自己中心的で他人との協調性に乏しい

【接し方のポイント】

反論・批判はしない

自分の思い込みを事実だと確信しているので、反論をしても聞く耳を持たず、自分の正当性を強く主張してくる。反論するほど考え方はかたくなになり、妄想が大きくなってしまうため、周囲の人は、考えを聞き入れ、共感してあげることが大切。

別の見方を提案する

妄想に対して共感し、理解できるという姿勢を示すが、妄想の内容が正しいと認めてはいけない。

× 謝った認知を「違う」と指摘するのではなく、

「別の見方、解釈の仕方もある」と提案する

対応は誠実に

現実に嘘や裏切りにあうと、ますます人が信じられなくなり、妄想が酷くなる可能性がある。


誠実な対応のポイント

1. 嘘をつかない

2. 約束をやぶらない

3. 本人の妄想に対し、批判・反論しない

4. 本人の妄想に共感しても、安易に同調はしない

サイクロイドを基盤とするパーソナリティ障害


本来は、明るく社交的、仕事熱心で、社会で活躍するタイプ。ただし、熱意が空回りしたり、活動過多のために心身が疲弊しやすく、うつ病や双極性障害へ進展する恐れもある

「サイクロイド・パーソナリティ障害」と、「サイクロタイパル・パーソナリティ障害」がある。

【接し方のポイント】

無理をしないように見守る

生きがいややりがいを見つけると、情熱を傾け、我を忘れてのめりこんでいくタイプの人が多くみられる。ところが、情熱を傾ける対象を失ってしまうと傷を癒すために仕事や社会活動に夢中になり、充実感を得ようとする傾向がある。

「無理しすぎないでね」と温かい言葉をかけるようにし、見守ることが支えとなる。


パーソナリティ障害と関連のある疾患

・うつ病

気分が沈んで憂鬱になり、疲労感が増し、興味や意欲が著しく低下する病気。無価値観、罪悪感を伴い、自殺に至るケースも少なくない。

パーソナリティ障害と合併しやすい


・双極性障害

気分の高揚する躁状態と、落ち込むうつ状態が交互に、または混合して現れる病気で「躁うつ病」とも呼ばれる。サイクロイド・パーソナリティ障害サイクロタイパル・パーソナリティ障害から進展することがある。

・統合失調症

思考・言動・意欲などの人格に障害が起こる病気。妄想や幻覚が現れる陽性症状と、感情鈍麻、社会的孤立などが顕著になる陰性症状があり、症状の現れ方は人によって異なる。

妄想性パーソナリティ障害、スキゾイド・パーソナリティ障害スキゾタイパル・パーソナリティ障害から進展することがある。また、スキゾタイパル・パーソナリティ障害では、統合失調症との識別が重要となる。


・妄想性障害

謝った思い込みにとらわれ、その思い込みを変えることができなくなり、別の妄想へと発展していく障害。妄想性パーソナリティ障害妄想型統合失調症と症状が似ており、それぞれの識別が重要となる。


・不安障害

強い不安に襲われ、様々な心身症状が起こる障害。社会参加への不安が強い社交恐怖や、激しい動機や震えの発作が反復して起こるパニック障害などがある。

パーソナリティ障害と合併しやすい。


・強迫性障害

根拠のない考え(強迫観念)や無意味な行動(強迫行為)にとらわれ、その考えや行為がやめられなくなる障害。他者の評価を気にする自己愛性パーソナリティ障害に合併しやすい。


・摂食障害

食事量が極端に少なくなる拒食と、むちゃ食いを繰り返す過食がある。若い女性に多く見られる。

過食は境界性パーソナリティ障害スキゾタイパル・パーソナリティ障害に合併しやすいといわれている。


・アルコール依存・薬物依存

大量の飲酒が習慣化し、飲酒がやめられなくなるアルコール依存症、薬物使用が常習化し、やめられなくなる薬物依存症がある。

反社会性パーソナリティ障害に合併しやすい。


経過

パーソナリティ障害は、治療をせずに、自然に治ることはない。環境や、その人の置かれた状況によって、症状が強く表れるときもあれば、比較的落ち着いた状況の時もあるが、生活上のトラブルがあまりおこらないからといって、パーソナリティの偏りがなくなったということにはならない。

治療をせずに放置しておくと、悪化していく可能性が高いことが分かっている。他人と衝突したり、非難・批判を受けたりするようになります。その経験が大きなストレスを与え、気持ちや考え方をますます頑なにするという悪循環を形成し、パーソナリティの偏りをさらに強くする。

そのため、早いうちに医療機関を受診し、診断・治療を受けることが望ましい。

短期間の治療で劇的によくなることはないので、治癒を見込むには通常でも5年程度、長ければ20年以上かかることもある


治療

治療にあたり、自分のパーソナリティ傾向を理解してもらうことが大切になる。パーソナリティの偏りがあることを認め、社会不適応を改善するために治療が必要であるという自覚を促す


・治療目標は具体的に

具体的な目標の方が、達成できたかどうかの評価がしやすく、良い評価が自覚できることが本人の治療意欲をさらに促すことにつながる

現在の目標を直視する


現在の問題を、過去の親子関係の問題にすり替えて、親に責任を押し付けようとするが、自分の力で目の前の問題を解決する姿勢が求められる。

たとえ原因が親子関係や思春期の友人関係にあったとしても、治療にあたっては、そうした環境に手を加えて改善するという方法はとらない。今、起こっている問題を取り上げ、現在の患者さんがどのように考え行動すれば問題が解決するのかを追求することが重要となる。

パーソナリティに踏み込み過ぎない

パーソナリティ障害の治療の目的は、患者さんがもともと持ち合わせているパーソナリティそのものを、全く違ったものに変えることではない。社会生活に必要なスキルを習得するなどして、生来の気質を有効に働かせるようにする。社会に適応できれば、パーソナリティに偏りがあっても困らないので、「障害」ではなくなる。


【代表的な治療法】

すべての人に有効な決定的な治療法はなく、さまざまな治療法を組み合わせながら、その人にあった治療法を見つけていく


・個人精神療法

医師や心理技術者が患者さんの心理面にさまざまな働きかけを行い、患者さんの認知や思考、行動パターンの偏りなどを改善していく根本的な治療法


・集団精神療法

患者さんの心理面に働きかけていく治療法ですが、集団場面で行うのが特徴。患者、治療者の他に、他の患者さんも交え、患者さん同士の相互作用を治療に生かす。障害を客観的に理解したり、他者との関係を学ぶ上で有効


・家族療法

患者さんと家族との関係を据え、そこにある問題を解決する方法。家族それぞれのポジションや役割を正常化することにより、患者さんの精神的な安定をはかる。


・薬物療法

不安や緊張、興奮、抑うつ症状などといった、患者さんの精神症状を一時的に軽減する目的で、投薬による治療を行う。


・認知行動療法

患者さんの認知のしかたのゆがみを是正する治療法。患者さんに自分を客観的に観察してもらい、認知のゆがみが、いつ、どのようにして起こったのかを記録し、自覚してもらう。そのうえで、それを改善するための認知のしかた、行動のとり方をロールプレイングなどを通して、実践的に学ぶ


参考資料:牛島定信『やさしくわかるパーソナリティ障害』

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