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  • 執筆者の写真就労移行支援ひかり

虐待防止

1. 虐待防止に求められる視点


虐待防止の為の取り組みは、理念を定めるのにとどまるのではなく、できる限り具体的な虐待の防止について実効性のあるものとしなければなりません。また、法律の制定の有無を問わず、日常的な虐待防止の取組みが進められなければならないのです。そのためには、障害者支援の現場の知恵を活用して、障害者虐待の特徴を捉えて、具体的な障害者虐待防止の視点を定めておくことが不可欠となります。

障害者虐待が発生する場所は、他の虐待ケースと同じように、施設内と家庭内の両方があります。虐待の類型には、5つの類型(身体的虐待、ネグレクト、心理的虐待・性的虐待・経済的虐待) のほかに、身体拘束やプライバシー侵害などによる人格的虐待も考えなければなりません。


2. 障害者虐待とは

障害者(児)に対する「虐待」は、「障害者に対する不適切な言動や障害者自身の心を傷つけるものから傷害罪等の犯罪になるものまで幅広いもの」と考えられています。

障害者の虐待防止を考えるに当たっては、家庭内虐待に対しては虐待を受けた者と虐待を行なってしまった家族等の双方への支援を位置づけることが求められます。また、施設内虐待に対しては「訓練」や「指導」の名のもとにおける虐待を許してはなりません。施設内虐待では、密室状況下にかける権利侵害行為を事前にできる限り防止する必要があります。家庭内虐待にしても施設内虐待にしても、早期の介入こそが不可欠であり、虐待の定義は拡大して捉えるべきです。

たとえば、外傷のおそれがなくても暴行が行なわれていれば、身体的虐待であると定義すべきであり、一度でもネグレクトがあれば著しくなくてもネグレクトであると定義すべきであり、本人を傷つける言動や行動があれば心理的虐待であり、身体的拘束を行なったりプライバシーを侵害したりするのは人格的虐待と定義して考えるべきです。


①身体的虐待

暴力や体罰によって身体に傷やあざ、痛みを与える行為。身体を縛り付けたり、過剰な投薬によって身体の動きを抑制する行為。

②性的虐待

性的な行為やその強要(表面上は同意しているように見えても、本心かの同意かどうかを見極める必要がある)

③ネグレクト(放置・放棄)

食事や排泄、入浴、洗濯など身辺の世話や介助をしない、必要な福祉サービや医療や教育を受けさせない、などによって障害者の生活環境や身体・精神的状態を悪化し、又は不当に保持しないこと。

④心理的虐待

脅し、侮辱などの言葉や態度、無視、嫌がらせなどによって精神的に苦痛を与えること

⑤人格的虐待

理由のない身体的拘束、無断でプライバシー侵害を行なうこと。

⑥経済的虐待

本人の同意なしに(あるいはだますなどして)財産や年金、賃金を使ったり勝手に運用し、

本人が希望する金銭の使用を理由なく制限すること


これらの虐待は、複合的に発生していることがあるとともに、顕在化していない場合も考えられます。また、障害者に対する虐待は、養護者や親族によるもの、障害者支援施設や障害福祉サービス事業者等の従事者によるものがあります。


3. 障害者虐待の特徴・共通点


障害者の虐待の特徴や共通点について、「障害者虐待防止についての勉強会」(厚生労働省・平成17年設置)では、主に施設・事業所における虐待の共通点を以下のように整理しています。


施設における虐待の共通点

虐待が表に出ない主な理由

・虐待事件の本質が利用者本人にも理解されていない。

・対応が困難な行動を抑えるのだから強い指導も必要だと、虐待の原因を問題行動に帰している。

・加害者が本来保護すべき立場にある職員であること。

・公的機関(行政側)が、事件を正面から受け止めきれない。

・行政が虐待を隠蔽する役割を担うこともある。

・親や家族が虐待する側を守る行動をとる。背景に我が子や家族を預ける場がない、行き場のない状況がある。


虐待がおきる理由

・体罰の容認

・体罰という認識が無い(指導、しつけと考えている)

・体罰はいけないと思いつつ行なってしまう。

・職員の個人的性格、ストレスなどにも関係している。

・職員側に利用者への支援のスキルがない場合が多い。


体罰を繰り返す理由

・体罰が発覚しない。

・利用者が言わない、言えない。

・利用者が言っているのに声が届かない→利用者の声を聞くシステムがない。

・職員が体罰を内緒にしている。仲間としてかばう傾向がある。

・体罰を上司に通告しても改善されない、通告が生かされないシステム。


虐待の発生については、「虐待者」、「被虐待者」、「その他環境や関係性」それぞれの側面の発生要因を踏まえて理解し、解決にあたることが求められます。虐待の背景を十分に把握することが、具体的な対応策を明らかにするのです。さらに、発生要因をしっかりと分析することが、虐待の再発防止や早期発見に結びついていくことを認識することが求められます。


4. 施設・地域における虐待の防止に向けた取組み


障害福祉サービス等を提供する施設・事業所においては、施設・事業所内に おける虐待の防止、早期発見・早期対応等に関わる取組みのみならず、地域 生活を支える拠点、中核的な社会資源として地域における虐待防止等の実践 も積極的に行なうことが求められます。これは、社会・地域における社会 福祉法人・施設の存在意義を高め、その使命と役割を果たすことにも繋がります。


虐待に対する問題意識と、その防止に対する日々の配慮は、障害福祉サービス等の社会福祉サービスの提供に関わる事業者、従事者にとっては、サービスの質といった重要な課題以前に、利用者に向き合う大前提として認識することが不可欠です。そして、虐待事案の発生は、利用者の生命と生活を脅かすことのみならず、社会福祉法人・施設としての社会的な信頼を著しく損なうこと、そして、その後の事業経営において大きな困難を抱えることになる問題として十分に認識する必要があります。

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